庶民のフルリッチな生活
FIREは最低限の生活費を投資によって稼ぎ出し、その収入で生活費を賄えるかのシミュレーションに基づいている。
資産形成系のYoutuberも、「とにかく節約しろ」「FIRE達成しても節約しろ」「車は買うな、買っても中古の軽を買え」「家賃は削れ」「外食は控えてたまに牛丼屋に行くぐらいにしろ」など夢もないし、うるさい。節約こそが人生における最上位命題かのようだ。
しかし、多くの人が資産形成の先に想像するのは「お金を貯めてリッチな生活を送る」というライフスタイルだろう。 お金を稼いだら安心して使いたいものである。
「最低限の支出」というのは計算は容易く定量化しやすい。さまざまな環境はあるものの、家計支出の項目を洗い出し、それぞれの部分最適な解で足し合わせればすぐにミニマムな家計が導出できる。
一方で「最大限の支出」というのは、贅沢にキリがないことを考えると導出はほぼ不可能であり、青天井であることはちょっと考えればすぐにわかる。
とはいえ、支出項目は変えず、また最大効用のある支出を選択していくミニマックスを考えればある程度の予測がつく。今回はこれを「庶民のフルマックスな生活」と銘打ち、実現可能性と具体的な生活を考察していく。
限界効用逓減の法則の活用
お金をかければかけるほどリッチな生活になっていく。
しかし、「限界効用逓減の法則」がある。年間支出200万円と300万円には目に見える大きな生活レベルの差があるだろう。しかし年間支出が1100万円と1200万円だとほぼ目に見える差はなくなってくる。どちらも100万円の差であるのにもかかわらず得られる満足度や幸福度に違いがあるのだ。これが限界効用逓減の法則という。
この法則より、ある程度で支出を切っておけば最大効用が得られるのではないかという仮定に基づき、「庶民のフルマックスな生活」のシミュレーションを行いたい。
家賃
まずは大きなパイを占めるであろう家賃から考えてみる。
高級マンションとなると再現がなく、大きさも100㎡超えの部屋があるが、あくまで庶民の生活のため70〜80㎡台のファミリーマンションを考えてみる。これならば2人暮らしならかなり余裕をもった広さだし、子どもも2人程度なら十分対応できるだろう。
都内で考えてみると、三田の高級マンションが90〜110万円らしい。晴海フラッグであれば30万円程度で住むことができる。ここでは庶民のMAX生活を考えたいため、その象徴たるタワーマンションに住むことを仮定すると40万円程度(管理費込)になるようだ。これだけ出せば、どこでもというわけにはいかないが、都内の主要な駅の近くに住むにはあまり困らないだろう。
年収と生活費
以上のように家賃を仮定すると、自ずと必要な収入が導き出されるだろう。 年間480万円家賃に費やすと考えれば、その3倍の1440万円が必要になる。キリよくやや余裕をもって1500万円としてみよう。
もちろん家計的には家賃の割合が低ければ低いほど安定する。通常の家計であれば1/3を家賃に回すのはかなり危険とさえる。
しかし、一旦それはさておき、審査に通るだけの年収をここでは考えることとする。
家賃と貯蓄額を調査し、いくつか実例を見てみた。
今回の「庶民のフルリッチリッチな生活」においては貯蓄や投資への入金はしないものとする。1500万円であれば家賃40万円の生活は普通に維持できそうである。
収入1500万円での最大効用の生活とは
以上のシミュレーションから、1500万円程度で最大の効用を得られそうである。
仮定を飛ばしていたが、私の考える最大効用の生活とは下記のようなものである。
- できること
- 住環境は場所を選ぶことなく、都内であってもアクセスは確保可能
- 新車国産車も購入可能
- 子どもの教育は公立校であれば全く問題ない
- できないこと
- ブランド力のある最新マンションへの引っ越し
- 高級外車への乗り換え
- 高級時計のコレクション
要するに高級志向のブランド品等は手に入らない。しかしながら、一般的な生活に必要な要素は十分に満たされている。
実現方法
これはいくつか考えられる
ソロでなんとか稼ぐ
独身や家庭持ちでも専業主フがいる場合、ひとりで稼ぐ必要があるだろう。1500万円かせぐとなるとかなり大変であり、おそらくサラリーマンであればこのあたりが給与として稼げる限界ラインになるはずだ。あるいは企業役員になるか、外資系で円安を利用し外貨を稼ぐか..。いずれにせよかなりハードルは高い。
その上、一人でこれだけ稼ぐ人たちはすでに「庶民のフルマックスな生活」を実現している可能性が高い。すべての支出の裁量を得やすいためだ。
夫婦で稼ぐ
夫婦で共働きするとなるとかなりハードルがひくくなる。 どちらかが1000万円をなんとか稼ぎ出せれば、パートナー側は500万円稼ぎ出すだけで達成可能だ。
資産収入
ところで、話の始まりはFIREだった。そのためフルFIREでいくらかかるか考えてみよう。
いわゆる 4%ルール
では支出の25倍資産が必要であるとされる。これに基づくと3.75億円必要だそうだ。FIRE界隈で有名な「資産ピラミッド」でいうと「超富裕層」には一歩届かない(一歩といっても1.25億だが..)資産である。
また、ここでも資産と労働の二輪で考えるとすると例えば資産5000万あれば200万の資産収入を使っても十分インフレに耐えるとされる。そうすると1300万を労働収入で得ればいい。
ここでも共働きであれば800万+500万のような組み合わせで達成可能なため、少しハードルが下がるのではないだろうか。
1億の資産であれば400万円の資産収入を使うことができる。そうなると必要な労働収入は1100万円となり、さらにハードルが下がるだろう。
総括
投資界隈があまりに節約に偏りすぎているので、なんとか夢と現実の境目を追ってみた。FIREは一つのゴールに値する。資産形成をいったいくらをゴールにすればいいのか、ということに定量的な目標を与えてくれるのだ。今回は逆に庶民がフルマックスな生活をした場合にいくら必要かを計算してみた。
今回は、資産の形成額というよりは年間どれだけ稼ぎ出せばいいかを焦点を当て、リッチで豊かな生活を送るにはいくらのフローが必要かを数値化したものだ。
なんとなく1500万円というのを目指せばよいだろう、というのが今回の結論になる。
考察:これって単なる市民権では
ここまでフルマックスな生活を書き下してみたものの、やはり庶民の生活を逸脱しない範囲で考えているため、このような生活は単なる市民権のような気がしてきた。都内に十分な居を構え、労働者として十分に働くには、この程度の環境はほとんど最低限必要なのではないだろうか。
都内は仕事やビジネスの機会は桁違いに多いが、その分ここでの生活は非常にコストがかかる。このような消費生活へのアンチテーゼとしてのリーンFIREというのが生まれるのも至極当然であるとうなづけてしまう。